楽天は6000億円で携帯キャリアになれるのか、イー・アクセスと比べる

 楽天が2019年末から携帯キャリアに参入するというニュースがありますね。流石にドコモ、ソフトバンク、KDDIと比較するのは難しいのでイーモバイルを展開していたイー・アクセスと投資の妥当性を比較してみたいと思います。

・楽天の参入に関する詳細の情報は公式声明からどうぞ
携帯キャリア事業への新規参入表明に関するお知らせ

1.楽天は6000億円投資するがそれで足りるのか問題

 多方面から楽天の2025年までで6000億円の投資はMNOとしては少なすぎるという意見が聞かれますね。実際問題として6000億円は少ないのでしょうか?

①ソフトバンクのボーダフォンの買収費用から考える

 確かにソフトバンクはボーダフォンの買収に1兆7500億円もの巨額の費用を投じています。買収した当時はソフトバンクやばいんじゃないかとまで言われていた記憶があります。

 携帯の電波を全国津々浦々まで展開するための費用はやはりこの買収費用をイメージするところが大きいのではないかと思います。そうすると6000億円くらいじゃまったく足りていない感じがしますね。

 しかも当時のボーダフォンって圏外になることが多かったイメージです。ソフトバンクになってからも最初の頃は電波が入りにくいというイメージはやはりあったのではないでしょうか。

②ソフトバンクのイー・アクセスの買収費用から考える

 2013年にソフトバンクの完全子会社となったイー・アクセスの買収費用がどれくらいかと言えば、総額で3651億円(株式1802億、負債1849億)※2です。

 イー・アクセスだけならなんと4000億かからなかったんです。ボーダフォンと比べればかなり安いですね。楽天は今更6000億円かけて新規で参入するならイー・アクセスを当時買収しておけばよかったのにと思いますね。

※2ロイター「ソフトバンク、イー・アクセスを約1800億円で買収」

2.設備投資金額を新規参入だったイー・アクセスと楽天で比較する

 イー・アクセスがイーモバイルで携帯事業に参入したのって割と最近なんです。サービス開始が2008年だったので10年立っていないんですね。

イー・アクセスが携帯事業に参入したときの投資金額
 イー・アクセスがイーモバイルで携帯事業に参入した際の投資金額や約3000億円のようです。また調達した資金の総額が3500億円で2200億借り入れています。

 イーモバイルは全国展開していた会社です。その会社で投資金額が3000億円程度だったんですね。楽天が6000億あれば足りると考えている理由はここらへんにもあるのではないでしょうか。

 でもサービスのレベルも恐らくイー・モバイルと同等のものになると考えられます。そうなると品質面での優位性は3大キャリアと比べて恐らくないでしょう。

参考
・http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0604/05/news089.html
・http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0511/10/news075.html

3.楽天の投資規模でどれくらい繋がるのか問題

 楽天がキャリア参入しても暫くの間は恐らく3大キャリアと同じようなカバー率になることはないでしょう。では似たような投資規模だったイー・モバイルの人口カバー率はどれくらいだったのでしょうか。

①サービス開始直後はドコモとローミングしていた

 2008年にサービスが開始されて2010年10月までドコモとローミング契約を結んだので設備投資を行うための時間的な余裕があった。引用した記事は2006年のものなのでサービスを開始する前から十分な準備をしていたことが分かります。

 ローミングがどうなるかが楽天の命運を握ると言っても過言ではないと思います。楽天ってそこら辺の交渉がどうなっているのかがまだわからないのでスタートがどうなるか謎ですね。

 W-CDMA方式で携帯電話事業に新規参入するイー・モバイルだが、2007年3月の時点では、まずデータ通信サービスから参入する予定としているが、今回の合意でローミングが提供されるのは、2008年3月開始予定の音声サービス。ローミング予定エリアは、東北や北陸、中国など31道県。イー・モバイルでは東名阪でサービスを開始する予定としており、ローミング予定エリアはほぼ東名阪以外となっている。ローミングは、2010年10月までの期間限定となっており、それまでにイー・モバイルが全国でネットワークを整備することになる。
引用: ケータイWATCH イー・モバイルとドコモ、ローミングで基本合意(2006/09/11 16:45

②ソフトバンクに買収される前のイー・モバイルの人口カバー率

イー・モバイルの人口カバー率がどれくらいだったかと言えば、2013年のイー・アクセスがソフトバンクに吸収される前における人口カバー率は94%※1でした。またLTEのカバー率は「全政令指定都市および全県庁所在地人口カバー率90%※1」だったようです。

 一応全国に展開していたと言って過言ではなかったカバー率だと思います。自分の記憶で申し訳ないのですが地方に行くと圏外になることがあった印象です。人口5000人くらいの離島は完全にアウトでした。

 とは言ってもサービスが2008年開始なので5年余りで人口カバー率90%以上までエリアを拡大したようですね。これはなかなかすごいことだと私は思います。

 7年で6000億円投資するという楽天もしっかりと設備投資を行っていけばイーモバイル程度のエリアにはなるのではないでしょうか。

参考
※1ソフトバンク株式会社「2013年3月末および9月末予定の EMOBILE LTE 人口カバー率について」

4.イー・アクセスの上場廃止前の決算から見る楽天の皮算用

 イー・アクセスがどれくらい儲かっている会社だったかを考えると楽天の野心もちょっとはうなずけるのではないでしょうか。上場廃止前の2012年期末の決算の情報をみると

・売上高:204,743百万円
・営業利益24,441百万円
・経常利益12,184百万円
・最終利益15,156百万円

 これくらいの収益がある企業でした。セグメント別の利益がわからないので携帯だけでなくADSLなどの収益も入っています。営業利益率は10%を余裕で超えているのでなかなか収益性は高い会社だったのではないでしょうか。

 サービス開始してわずか4年なのでそれなりに上手くやっていたことがこの数字を見ると分かります。少なくてもイー・アクセスは投資には成功しています。

 恐らく楽天もイーアクセスに倣っていくと考えられるので当面は3大キャリアのように大きな利益を狙っていく投資ではないでしょう。あくまでMVNOの延長線上という感じだと思われます。

 楽天が2025年までに6000億ぶっこめば売上・収益性でイー・アクセスは超えるんじゃなかろうかと思いますがどうでしょうか?MVNOの楽天モバイルもそれなりに成功しているようなので楽天の経済圏を上手く利用する1つの方針でしょうか。

参考
YHAOOファイナンス「イー・アクセス(株)【9427】」
kabutan「イー・アクセス」

5.楽天がキャリア化したら乗り越えてほしい所

①自前回線だけだとMVNOよりも繋がらなくなることは確実

 楽天が独立したキャリアとなった場合に1つの問題としてあるのがMVNOの頃より繋がらなくなるのは確実であるということです。MVNOの楽天モバイルはドコモの回線を使用しているので全国で繋がります。

 しかし楽天の自前回線のみになった場合はイーモバイル相当としても人口カバ率は90%台の中盤くらいでしょう。ぶっちゃけてMVNOユーザーは速度は求めていないでしょう。私もそうですがつながりやすさと値段が全てです。

 そして楽天モバイルの利用者はMNOが整い次第乗り換えてもらう計画らしいです。。都市部を除くと移行して繋がらない人が出てくるのは間違いないでしょう。

 仮に速くなっても繋がりにくくなって値上げだとユーザーが離れていくのは火を見るより明らかです。どうやって解決するのでしょうか。

 恐らくドコモとローミングするにしても最初の数年だけだと思いますし。

②イーモバイルはライバル不在だったけど今は……

 イー・モバイルの時代は安さを求めるならイー・モバイルしかありませんでした。そのため繋がりにくくてもイーモバイル需要ってかなりありました。イー・モバイルのNexus5のお世話になった人も多いはずです。

 ところがどっこい今は時代が変わりました。準キャリアになってしまったYmobileやUQがいます。そして数多のMVNOがいます。もしMNOを成功させるならMVNO大手のIIJなどを巻き込まないと苦しい気がします。

 もはや値段だけでは勝負にならない時代になっています。楽天はどのような魅力的なサービスにするのかが重要になりますね。でも楽天のサービスって無難で面白くないんでどうするか見ものです。

 しかもここから5Gへの以降というタイミングも重なってくるので楽天の次の1手だけでなく5年後にも期待です。

  

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