何故経済が成長したのに豊かさを実感できないのか考えてみた

 日本は貧しくなったといわれるが現在の購買力平価でも実質でもGDPは1990年と比べて大幅に成長している。それにもかかわらずあまり豊かになった感じがしないのではないか。人間はなぜ豊かさを感じにくくなったのかを考えてみた。

1.物質的な豊かさによる体感的な利益は永久には続かない

 人間は何にでも慣れてしまう生き物だと思う。スマホがあることで生活が便利になったと実感できるのは、スマホが出てきてからの数年間だけではなかったでしょうか?あって当たり前になってしまい生活に溶け込んでしまうと、その製品に対して特別な便利さを感じることはなくなってしまいます。慣れてしまうんですね。ないと不便に感じるので気が付かないうちに生活水準のベースが底上げされるのだと考えられます。

 三種の神器と言われた白物家電も今やあることが当たり前でそこに豊かさは感じないです。テレビは白黒からカラーになり、SDからフルHDへと進化し付加価値は大幅に向上しています。どこからでもインターネットができるようになっている。しかしそれに有難味は感じにくくなっているのではないだろうか。こうした物質的なものによって豊かさを永久に感じることができないのは前例からも明らかであると思う。
 

3大欲求が満たされてもそこに豊かさは感じない

 今は生活保護が提供する衣食住が保証されている状態がおそらく経済的な最低ラインです。しかし生活保護受給者の生活水準は発展途上国や50年前の日本と比べればまったく貧しくはありません。しかしこの最低ラインでは貧しいと感じるのは3大欲求を満たしてもそれでは豊かさを感じないという所にあるのではないでしょうか?

豊かであるという基準が永久に上がり続ける

 H26年度の「国民生活に関する世論調査」によると

(1) 去年と比べた生活の向上感
生活は,去年の今頃と比べてどうかと聞いたところ,「向上している」と答えた者の割合が6.0%,「同じようなもの」と答えた者の割合が72. 9%,「低下している」と答えた者の割合が20.9%となっている。
 前回の調査結果(平成25年6月調査結果をいう,以下同じ)と比較して見ると,「同じようなもの」(77.8%→72.9%)と答えた者の割合が低下し,「低下している」(16.8%→20.9%)と答えた者の割合が上昇している。

という調査結果があった。ぶっちゃけた話でこの年のGDP成長率プラスです。にも関わらず成長の実感は乏しくむしろ悪化していると感じている人が20%もいます。

 生活水準が僅かな右肩上がりや平行線を辿っているとどちらかと言えば貧しくなっていると錯覚するのではないでしょうか?

 これは生活保護を含め衣食住を満たすことが容易な社会になったことで豊かさを感じにくくなったと考えられる。3大欲求は満たされる欲求で、それ以外の欲求は満たされない欲求であると考えています。経済規模が小さい頃は3大欲求を満たすために大部分の労働を割いていが、現在は物質的・精神的な面を満たさないと豊かさを感じにくくなっているのではないでしょうか。際限のない欲求は満たされないので豊かさを感じにくくなったと考えられます。

 また世代が変わることで世代によって生まれたときの基準となる豊かさのベースが変わる。生まれたときからインターネットがある世代にはそれがあるのが当たり前になる。社会が豊かになるにつれた「ある」ものが増えていくと「ない」ことは貧しいという認識になる。そのため年々豊かさのを感じるためのハードルが上がっていってしまっています。

豊かさは自己の内心的側面よりも同じコミュニティに属する人との比較によって感じる相対的なもの

 豊かさ数字にある程度あらわれるのですが絶対的な尺度があります。しかし生活の中で感じる豊かさとは相対的なものであると考えられます。
 年収が100万円でも300万円でも800万円であっても時代やコミュニティの文化が違えば豊かさの尺度が異なる。大抵の場合には目の見える範囲の他者と豊かさを比較することで自分の豊かさの程度を実感するのではないでしょうか?。

 江戸時代と比べて今が豊かになったといっても無意味ですし、日本人は途上国の人と比べて豊かだと言われても
「だから?」
と思いませんか?豊かさには影響を及ぼさないですよね。手の届かない範囲の人と豊かさを比べる無意味である。そうしたことから「〇〇と比べて豊かである」という比較は意味をなさないと考えられる。

 

まとめ

・豊かさにはある程度時間が経つと慣れてしまう
・豊かさの基準が上がり続けてしまう
・本能である3大欲求は満たされ、物欲などの満たされない欲求のみとなった
・豊かさとは相対的なものである
 こうしたことから同じ状態で停滞することは豊かさを感じなくなる要因となる。そのため常に成長し続けるしか豊かさを感じる方法がない。そのため際限なく豊かさを追い求めなくてはならなくなった。
 また他者との比較によって自己の豊かさを測るため、他者が豊かさを向上させると相対的に貧困となる。そのことが自分の豊かさを感じにくくさせる要因となる。
 こうしたことから人間は現在より未来が豊かでなくてはならず、そして同じコミュニティの他者と比べ豊かであり続けなければ豊かさを実感できなくなったのではと考えられる。

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