サマータイムは健康を考えれば止めるべき。睡眠から考えるデメリット

 なんで政治家はサマータイムをやりたがるんでしょうか。サマータイムが与える睡眠への被害をまとめました。

1.起きていること眠ることは結構複雑に成り立っている

 人間は概日リズムという約24時間サイクルの体内時計と、地球の自転により起こる24時間周期の日の出と日没の動き従ってで1日を過ごしています。

 夜は眠くなって眠り、朝になると自然と目が覚めますね。身体は日中は動くために覚醒を維持し、夜は眠くなるように体内時計をコントロールしています。

 覚醒と睡眠は様々な神経系、ホルモン、神経伝達物質、自律神経系などによってコントロールされて成り立っています。
(眠りに興味があるなら「睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか (ブルーバックス)」がお勧めです。

 さらに体内のホルモンや神経系以外にも太陽光や食事など環境変化によって24時間サイクルのリズムがが維持されています。

 眠ることに必要な機能のバランスが整っていないと眠れなくなり。覚醒することを維持する機能が異常をきたすと覚醒状態を維持できなくなります。

 規則正しい生活を維持するのは複雑な生体機能によって維持されているので、サマータイムは生活習慣の中で出来上がっている睡眠と覚醒のリズムをずらしてしまう要因となります。

2.サマータイムでずれた睡眠時間に慣れるまでの期間

 わずか1~2時間のサマータイムに慣れるまでの時間がどれくらいかという研究があります。それによるとサマータイムに体が適応するには数日から数週間は必要になるようです。

2000年以降に発表されたDSTと睡眠に関する主な文献を発表された年代順に一覧にした(表2)[1, 22-28].DSTの開始後(春)と終了後(秋)にもたらされる急激な時刻の変化に対し,内因性概日リズムが再同調するのには,数日から数週間を要す [25, 26].また,睡眠間は,30~60分減少する [23, 27, 28].これらは,特に,春のDST開始後に顕著とされ [26-28],中でも,日頃から睡眠不足の者や夜型化傾向の者は,その影響を受けやすい [22-26].
引用「サマータイム制度─睡眠および健康について─ 」

 健康な人ならば一定の期間で適応していくと考えられますが、不眠症などの疾患がベースにある方はそう簡単にはいかないのではないかと思います。

3.全ての人が人間は同じように寝て同じように起きることはできない

寝る時間は人それぞれです。実は朝方・夜型リズムの人間がいてそれを「クロノタイプ」と呼びます。大きく分けると黒のタイプには朝型人間と夜型があり、朝に強い人と夜に強い人いるという研究があります。

 朝方は早寝早起きが得意で夜型は遅寝遅起きが得意です。朝方が夜型の生活をするとストレスがかかるように、夜型に朝方の生活をさせるとストレスがかかります。

 また朝方夜型は個人差だけでなく年齢の影響も受けています。例えば高齢者の傾向としては睡眠相が前進する傾向にあり朝早く目が覚め人が多いです。

 また逆に20歳前後をピークにし若者は夜型のリズムの傾向が強くなるようです。10代後半から20代前半のころ無駄に夜更かして朝に弱かったのはこのせいですね。

 高齢者は朝に強く、若者は朝に弱いという傾向は年齢による睡眠タイプの変化が引き起こしています。

 そのため朝に早起きをする生活がすべてにおいて望ましいかというとそうではありません(個人差や限度があると思いますが)。

 朝に強い人が夜更かしするとパフォーマンスが低下するのと同じように、夜型で朝が弱い人に早起きをさせるとパフォーマンスが落ちる可能性があるんです。

 そのためサマータイムによって夜型人間を早く起こすことが望ましいかどうかを考えないといけません。

4.サマータイムは睡眠のリズムの調整能力が低下している人への影響が大きい

 概日リズム睡眠障害という疾患があります。健康な人ならサマータイムで就寝時間が変わっても数日である程度慣れていくと考えられます。

 しかしすでに睡眠に問題を抱えている人はそうもいかない可能性があります。調整能力の低い人に制度を合わせないとより健康に問題を抱える人が増えるのではないでしょうか。

5.健康被害以外のサマータイム推進理由の疑問点

 ちょっと興味があったので健康面以外でのサマータイムの推進理由を見てみます。
・経済効果
 余暇時間の拡大やワークライフバランスの改善への効果をメリットにあげているようですね。

 仕事が終わってから寝るまでの時間はサマータイムをやってもやらなくても一定です。余暇時間は増えません。労働環境を改善することを目的にするなら違う施策が必要です。

 参考サイトに経済効果7000億円としている根拠のレポートのリンクがあるので軽く読んでみてください。

 不確定要素などを考えた場合には7000億の経済効果が本当にあるのかどうかも定かではないです。あったとしてもGDPの0.3~0.4%の押し上げ効果です。

・省エネ
 電灯を灯す時間が短くなることでエコになるってのがサマータイムが始まった由来です。現代ではLEDなどの省電力化も進んでおり省エネ効果は微々たるものであると思います。

 また涼しい時間に活動するといいますが、暑い日は朝も夕方も暑いので朝から冷房使います。熱帯夜の日数を考えれば夜も暑いので冷房使うでしょう。

 環境への影響を考えるのなら石炭火力発電の更新、地中熱ヒートポンプや古いエアコンの更新など異なるアプローチで省エネを推進したほうが効果を期待できるでしょう。

・涼しい時間を有効活用する
 暑さをどうにかしたいならヒートアイランド対策をやるべきであってサマータイムは解決不可能。湾岸部のビルでもぶっ壊せば海風が通って気持ちくらいは涼しくなるかもしれません(笑)

 涼しい時間帯を活用したいならフレックス制で対応できます。フレックス制なら実際に勤務開始時間が早くなるので夕方の余暇時間は伸びます。

 しかも帰宅時間が早くなるので帰る時間は糞暑いので熱中症リスクが上がる可能性もあるかもしれません!?

6.参考サイト等の紹介

睡眠の都市伝説を斬る「第24回 朝型勤務がダメな理由」
 国立精神・神経医療研究センター部長の三島和夫さんによるコラム。睡眠サイクルは個人によってことなり、また年代などの影響もうけている。早起きが有益とは限らないという内容のことが書いてあります。この人のコラム面白いです。
 

日本睡眠学会「サマータイム―健康に与える影響―」
 サマータイムとは何か。日本人にサマータイムは合うのか。サマータイムを導入している国で調査された健康被害の紹介などが書いてあります。特に健康被害に関しては一番わかりやすいです。

環境省「サマータイムとは」(環境省が昔作ったパンフレットのようです)
 環境省としてのサマータイムに関する見解が書いてあります。内容を読む限り2010年前後に作成されている感じがするので少し古いパンフレットです。

・睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか (ブルーバックス)
 睡眠が身体のどのような働きによって誘導されているのかを紹介している本です。ホルモンにhttp://team.tokyo-med.ac.jp/psychiatry/news/2018/05/91.htmlよる影響が睡眠にとっていかに重要なのかという感じの内容です。
 新書ですが読むのはそれなりに気力が必要になります(笑)

不確実性の高いサマータイム効果 ~ システムトラブル等のテールリスクに対する検討 も 必要 ~
 第一生命経済研究所の永濱利廣さんのレポート。おそらくレポートすら読んでいないであろう人に経済効果7000億をネタにされてしまっていてちょっとかわいそうです。

 読むとわかりますがサマータイムはおそらく反対か慎重派である感じがします。なんせ経済効果が発生しない可能性も十分考えられるって言っちゃってます。しかも〆を要約するとは「デメリットを話し合えよ」です。

サマータイム制度─睡眠および健康について─

東京医科大学 精神医学分野
https://www.med.kindai.ac.jp/anato2/so.pdf
 「夜型のクロノタイプを持つ者の早すぎる起床時刻はプレゼンティーイズムを招く」という研究の概要が書いてあります。

関連ニュース
Newsweek「サマータイム存続の是非をEU市民に問うと……84%が廃止希望だった」
毎日新聞「サマータイム 廃止に向かうEUを待つ難題」

最後までお読みいただきありがとうございます。何か参考になるところがあったら幸いです。

スポンサーリンク
レクタングル大
レクタングル大

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする