ベーシックインカムの財源を確保するなら税金は2倍以上になる!?

 ベーシックインカムを実施するための財源を確保することができるでしょうか。はっきり言って問題点だらけで現実性には疑問符があります。ベーシックインカムを行ったら税金がどうなるかを考えました。

1.ベーシックインカムとは

ベーシックインカムをwikipediaで検索すると下記のようになります。

国民の最低限度の生活を保障するため、国民一人一人に現金を給付するという政策構想。生存権保証のための現金給付政策は、生活保護や失業保険の一部扶助、医療扶助、子育て養育給付などのかたちですでに多くの国で実施されているが、ベーシックインカムでは、これら個別対策的な保証を一元化して、包括的な国民生活の最低限度の収入(ベーシック・インカム)を補償することを目的とする
引用:wikipedia「ベーシックインカム」

2.ベーシックインカムを行うのに必要な費用

 ベーシックインカムの支給額は最低限の生活を営むことができる程度として生活保護を基準に考えてみましょう。現在の生活保護の支給額を135310円(参考:http://生活保護.biz/kingaku/)とします。

 135310円を基準額として1億2千万人が受給すると考えると
135310×12×120000000=194,846,400,000,000
 なんと194兆8464億円かかるということになります。なんとも途方もない金額ですが可能なんでしょうか。

3.日本の国家予算から財源を考える

①日本の税収はベーシックインカムを実現するには足りない

 一般会計の歳入と歳出は97兆4547億円で歳入のうち税収が57.7兆円で他は国債を発行して賄っています。57兆円あまりしかない税収では194兆円かかるベーシックインカムを賄う財源としては難しそうです。

 そのほかに財源があるとすれば特別会計ですね。H29年予算の特別会計の歳出総額393.4兆円でなんかすごそうですが会計間のやりとりと国債の借り換えを除いた純計額は196.8兆円ありますがどうでしょうか。

②一般会計と特別会計から財源を捻出できるか考える

一般会計と特別会計の歳出の内訳を見てみると
(1)一般会計の歳出内訳
・国債費 23.5兆円
・社会保障関係費 32.5兆円
・地方交付税交付金等 15.6兆円
・その他(文教及び科学振興 、防衛費、公共事業費など)

 こうした事業の支出として予算は消化されています。そのため自由に動かせるお金はほぼありませんね。ベーシックインカムに充てるなら社会保障関連費でしょう。

(2)特別会計の歳出の内訳
・国債償還費等が90.5兆円
・社会保障給付費67.1兆円
・地方交付税交付金等が19.4兆円
・財政融資資金への繰入れ12.0兆円
・復興経費 2.3兆円
・その他5.6兆円
 となっています。特別会計の特性を考えると自由に使えるところはほぼないですね。ここでも使えそうなのが社会保障給付費ですね。
 
 地方交付税や公債費などを財源にするわけにはいかないため、こちらも社会保障に充てているお金を財源に使わざるを得なくなりますね。社会保障費でベーシックインカムを実現できるでしょうか……。

③日本の社会保障費

 医療・年金・介護・子育て支援などの社会保障が現在日本にはあります。その日本の社会保障給付は2016年度は118.3兆円にもなります。ここを財源にしながらベーシックインカムを実現するとしたらどうなるでしょうか。

 生活保護と同等の水準のベーシックインカムを行うには約194兆円必要なので80兆円程度の財源が不足しますね。ここを増税でカバーできるかどうかがポイントでしょうか。

3.ベーシックインカムの実現可能性

①ベーシックインカムの財源の1つは今ある社会保障費になる

 まずベーシックインカムを実現するにあたって現在の社会保障費を財源にする場合には、年金・医療保険・介護保険などのすべての社会保障がなくなることを意味します。しかも前述の通りそれだけでは足りないので増税をしないと財源の確保はできません。

そのため全ての社会保障がなくなると考えていいでしょう。そこまでしてベーシックインカムを実現するメリットがあるかは定かではないですね。

 さらに現在の税収や社会保障費から考えてもベーシックインカムを行うための予算をすべてカバーできませんね。80兆円程度は増税でカバーしないといけません。

②さらなる増税をしないとベーシックインカムの財源は賄えない

 増税で財源を賄う場合には現在の日本の歳入のうち税収が57.7兆円あるので所得税・法人税・消費税を2.3倍にすれば80兆円の財源を確保でき、歳入面ではなんとかなりそうですがどうでしょう。

 しかしちょっと問題があります。日本は累進課税のため単純に税金を2倍にはできないんです。所得税の最高倍率って40%なのですが、これを単純に倍にしてしまうと所得がなくなっちゃいます。そのため所得が高い人からだけでなく低い人からも広く深く税金を取る必要が出てくる可能性が高いです。

 そのため所得税収入を2倍にするために多くの人の所得税は2倍以上に大幅な増加する可能性が高いでしょう。税負担の増加とトレードオフでベーシックインカムの財源を確保するしかなさそうです。
 
 また法人税を上げること自体が現在の世界的な流れから難しいことも問題でしょう。そのため財源を確保することは非常に困難であるということは間違いないでしょう。

 ベーシックインカムを実現するための財源を確保するには問題が山積しています。また既存の社会保障もなくなることもデメリットなので13万円貰うメリットと比較して有益かどうかも考えなくてはダメそうです。

4.日本の財政事情だとベーシックインカムは富裕層と貧しい人ほど損をする

①富裕層
 まず損をするのはもともと税負担が大きい富裕層です。10万円やそこら貰ったところで税負担の増加を補うことはまず不可能でしょう。そのためまず得することはありません。そのほかに損するといえば所得を得る手段が社会保障以外にない人です。

②高齢者
 年金生活の中でも厚生年金だった人は単純に厚生年金の支給額よりもベーシックインカムのほうが少ないため所得の減少が考えられます。また医療保険もなくなるので年金をもらっている高齢者は医療への支出が大きな負担になります。また民間の保険への支出の増加がも考えられます。また介護保険などの問題もあるので非常に厳しい結果になると考えられます。
 
③生活保護受給者
 生活保護の受給者も間違いなく損をします。というか生活保護がなくなることが想定されるので、生活保護が提供していた金銭以外の様々な保障が打ち切られるため実質的な給付額は引き下げられるものと考えられます。

④難病などに指定されていない疾患を持っている人
 健康保険が廃止された場合には医療負担の増加が考えられます。そのため継続的な診察が必要な疾患に罹患している場合には治療費の自己負担が大きい人ほど厳しいでしょう。

5.ベーシックインカムで得をする人

①最低賃金程度の所得で働いている低所得層 
 生活保護程度の金銭をベーシックインカムから得られるため所得は概ね倍増します。現在の社会保障の狭間にいる貧困層は得するといって間違いありません。とはいえ健康である必要があるのでなかなか難しいところではありますね。

②子供の多い大家族
 単純に労働者として所得を得ることが難しい子供はベーシックインカムによって金銭的に得をします。子供が多ければ多いほど世帯所得の増加を期待できます。子供が独立したら一気に世帯所得の減少するのであくまで短期~中期的に得をするといったところでしょうか。

6.ベーシックインカムは難しい

 結局のところ現在の日本の財政状況ではベーシックインカムは困難であるといって間違いないでしょう。給付額が最低限の生活にとどまるレベルでも増税が必要になります。

 また社会保障が他になくなってしまうことから生産手段がない貧困層ほど生活の質の維持が困難になるとも考えられます。こうしたことから日本ではベーシックインカムを導入することは不可能であると私は考えています。

そもそも現状の社会保障への不満があまりないですし、もし生活が困窮したら生活保護があります。ベーシックインカムを導入する必要性なんてあるんでしょうか?

※参考
・社会保障の給付と負担の現状(2016年度予算ベース)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280915/shiryou3-1-2.pdf
・特別会計の歳出(29年度予算)
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2017/seifuan29/24.pdf
・日本の財政を考える
http://www.zaisei.mof.go.jp/num/
らばQ「スイス、ベーシックインカム導入へ国民投票…支給額は月30万円 「絶対にありえない!」海外の反応」この記事はスイスのベーシックインカム案に関して面白いことを書いてあるのでお勧めです。

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