ボクシングの村田諒太は何故凄いのか、そして世界レベルで通用するのか

 ついにWBA2位まで上り詰めた村田諒太の世界タイトルマッチが決まりましたね。オリンピックの金メダリストというのはボクシングの中では世界チャンピオンになるよりも難しいことなのです。ボクシングのオリンピック金メダリストのどこが強いのかそして凄いのかを解説します。

1.ボクシングの金メダルと取った日本人はたったの2人

 村田諒太よりも以前に日本人でオリンピックのメダリストとなったボクサーはたったの1人しかいません。一方でボクシングの世界チャンピオンは2017年5月までで83人もいます。この数字を見ても分かるようにボクシングでオリンピック金メダルを取ることは至難の業であり世界チャンピオンになるよりも難しいとも言えるのです。

 日本で1番強くてもオリンピックには出られないんです。日本とアジアでの予選を通過しないといけないため実力があっても出場すらかなわないのがボクシングのオリンピックです。出場しただけでも凄いことで、金メダリストとなったことは本当に偉業なのです。驚異的な実力がなければ不可能なのです。

①48年間唯一のオリンピック金メダリストだった桜井孝雄
 1964年の東京オリンピックで日本人の金メダリストが誕生しました。バンタム級の桜井孝雄です。なんと日本人では初のボクシングの金メダルを獲得した人です。そして村田が金メダルを獲得するまでの48年もの間誰も金メダルを獲得する人はいませんでした。その為オリンピックの金メダリストになった日本人ではわずか2人しかいないのです。

 桜井孝雄もオリンピックで金メダルと獲得した後にプロに転向しました。しかし残念なことにプロでは世界タイトルはとれませんでした。東洋太平洋王者を2回防衛しキャリアを終えています。アマは倒すボクシングではないのでプロの世界からする消極的に見えて面白みに欠けると評価されたようです。

2.オリンピック出場を果たせなかったが後に世界チャンピオンなったボクサー

 最近の世界チャンピオンでオリンピックの出場を果たせなかった有名な選手が二人います。
①井岡一翔
 現在3階級王者で当時高校6冠を引っさげて北京オリンピック出場を目指していたが予選敗退したためオリンピックを断念しプロ入りする。その後当時最短での世界タイトルを獲得する。

②内山高志
 世界タイトルを13回もの防衛を重ねた近年では最強クラスのボクサー。アテネオリンピックの出場を目指していたが予選敗退しボクシングの引退を考えるもプロ入りし世界チャンピオンとなる。
 
 このように非常に強い世界チャンピオンでさえどうにもならないのがオリンピックなのです。世界チャンピオンになる実力があってもオリンピックに出場することすら叶わないということもある。そんな中で金メダルと取るということは本当に偉業としか言い様がないのです。村田諒太は日本アマチュアボクシングでは生ける伝説になったと言っても過言ではないと思います。

3.オリンピックで金メダルを獲得している現役世界チャンピオン

①ゾウ・シミン(北京オリンピック、ロンドンオリンピックの金メダリスト)
 30歳を過ぎてからプロ入りしたボクサーです。実は初の世界タイトルマッチの対戦相手は元アマエリートだったアムナットでした。あの井岡一翔に勝ったアムナットです。しかもゾウ・シミンはアムナットに負けてしまいました。元金メダリストと言ってもやはり世界チャンピオンになるのは簡単ではないということです。しかし翌年には王座決定戦で勝利し無事世界タイトルを獲得しました。

②ギレルモ・リゴンドウ(シドニーオリンピック、アテネオリンピック金メダリスト)
 西岡を圧倒したドネアを倒した現役の世界チャンピオンです。あのドネアがあっけなく負けました。天笠尚と対戦したことがあるため知っている方も多いのではないでしょうか。
 非常に強い世界チャンピオンであるのですが、消極的で塩試合が多いのに強すぎて面白くないためあまり人気がないです。これは桜井孝雄と同じでアマボクサーの特徴といっていいと思います。

③ワシル・ロマチェンコ(北京オリンピック、ロンドンオリンピック金メダリスト)
 現在最も注目されている元金メダリストと言っていいでしょう。わずか3戦で世界タイトルを獲得し7戦目には2階級王者となっています。恐らく世界最速の2階級王者です。井上尚弥よりも早い階級制覇です。

④アンドレ・ウォード(アテネオリンピック金メダリスト)
 パウンド・フォー・パウンドでトップに君臨しているボクサーです。WBA・IBF・WBO世界ライトヘビー級スーパー王者というとんでもない経歴の持ち主です。唯一の重量級の選手ですね。こんなすごい人でも世界戦を経験したのは21戦目なんです。重量級の層の厚さはやっぱり軽量級とは違うということですね。

 オリンピックで金メダルと取りプロに転向した現役世界チャンピオンはすべて強い世界チャンピオンと言って間違いないです。オリンピックの金メダリストというのはプロに転向してもかなりの実力者であることがわかると思います。こうしたことからも村田にはかなりの期待ができると言って間違いないでしょう。

3.村田諒太は世界で通用するのか

①ミドル級で世界と戦えた唯一の日本人ボクサーは竹原慎二
 過去には保住 直孝や鈴木悟という世界ランク入りしたミドル級ボクサーもいたが世界レベルには達することはできなかった。東洋で強くても世界ではまったく相手にされないのだ。世界と戦えたミドル級ボクサーはこれまでは竹原しかいなかった。

 そんな竹原も防衛は出来ませんでした。初防衛戦であっさりと負けてしまいました。日本人にとってミドル級というのは非常にハードルが高いと言って間違いありません。

②村田諒太は世界レベルのボクサーで間違いないが…… 
 村田はデビュー戦でOPBF王者を圧倒したことから分かるようにデビューした時点で東洋太平洋レベルには収まっていないのです。他のオリンピック金メダリストと同じようにスタートから世界レベルの実力を持っていました。そして現在はWBAで2位です。名実ともに世界トップクラスのボクサーとなりました。

 実力が今ひとつわからないのは世界ランカーとの試合がないためです。ミドル級は群雄割拠なので一度でいいから世界ランカーとの試合をやってほしかったですね。とは言えOPBFの王者を寄せ付けなかったところを見るとかなり期待はできると思います。正直な所は実力の底の深さは未知数なんです。

③ミドル級は世界戦を組みにくい階級だったので幸運に恵まれた
 世界タイトルを狙うに際して運が悪かったのはゲンナジー・ゴロフキンという化物がいたことです。ゴロフキンの経歴はWBA世界ミドル級スーパー王者・WBC世界ミドル級王者・IBF世界ミドル級王者という3団体を統一して38戦無敗1分け、WBA18回防衛……。もはやレジェンドクラスの王者です。

 現役の中で最強クラスのボクサーと同じ階級だったのはちょっと運が悪かったのではないかと思います。しかし一転幸運が舞い込んできたのがWBAの正規王座※の空位になったことです。
※WBAはスーパー王者、正規王座、暫定王座とタイトルを乱立している。ゴロフキンがスーパー王座で正規王座と指名試合したので正規王座が空位になった。

 ランキング1位と2位で試合を行い制したほうが正規王座となる棚ぼた世界タイトルマッチが舞い込んできたのだ。そんなこんなでアッサン・エンダム(ハッサン・ヌダム・ヌジカム)との試合が決まった。こんなチャンスはきっともうこないだろうと思います。

④アッサン・エンダムには勝てる可能性がけっこうある
 実はアッサン・エンダムはリオオリンピックに出ています。しかも一回戦敗退です。元WBOの王者ですがそれでもオリンピックに出るとこんな成績で終わります。アマとプロは違う世界ですが金メダルを取った村田の実力が劣っているとは思えませんよね!

絶対に勝ってほしいですね!

4.世界レベルで通用したことを証明しWBA王者となる
 10月22日の試合では前回の試合で苦戦したエンダムを圧倒してTKO勝利を飾りましたね。この試合では今までになく手数が出ており、インファイトでエンダムを圧倒していました。当て感のいい選手なので本当によくパンチがガードの隙間に潜り込みますし、パンチ力があるので本当に驚異的な強さでした。

 恐らくゴロフキンは今年9月の試合で引き分けになったアルバレスと再戦することになると思うので是非その勝者と試合を組めるようにジムには頑張ってもらいたいです。ゴロフキンは35歳で衰えは隠せない年令になってきたのでやるなら今がベストだと思うのですがアルバレスとどうなるかですね。

 とは言えこのビッグマッチに臨むためには1年以上かかると思わるので村田も1~2回の防衛はすることになりますね。まずは初防衛戦の相手をねじ伏せることが先決になりそうです。

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