2020年に施行を目標とした健康増進法改正案によって飲食店での喫煙の規制の流れが加速しています。
全面禁煙による影響をすこし考察してみます。
1.何故禁煙化の流れが大きくなってきているか
①受動喫煙の問題
これが最大の問題でしょう。喫煙だけでなく受動喫煙による健康被害を考えると公共の場での全面禁煙はやむを得ないでしょう。
なにせ健康増進法の改正が絡んでますから。
②喫煙率の低下
日本の喫煙は徐々に低下していっています。喫煙者の割合は平成28年「国民健康・栄養調査」の結果によるとH28年で18.3%と2割を切る水準になっています。
喫煙者数の減少が喫煙スペースをを確保して営業するメリットの低下につながっていると考えられます。
飲食店で喫煙を認めることのメリットとデメリットから考えれば非喫煙者が多い世の中ではデメリットが多いかもしれません。
※引用:厚生労働省『平成28年「国民健康・栄養調査」の結果』
③飲食店を選ぶ理由に禁煙分煙されていることを求める人が結構多い。
日本政策金融公庫による「外食に関する消費者意識と 飲食店の経営実態調査」によると、飲食店を選ぶ理由に禁煙分煙されていることを求める人の傾向がわかります。
※引用元『日本政策金融公庫「外食に関する消費者意識と 飲食店の経営実態調査」』
上の表によると飲食店を選ぶ際に実に6割の人が「禁煙・分煙されている」ということを重視している人が全体の6割います。
その傾向としては男性よりも女性がその傾向が高い。また低所得者よりも高所得者がその傾向が高いです。
つまり全面禁煙化自体がお客さんを呼び込むための戦略になりうる可能性があるわけです。
全面禁煙が進めば喫煙できることを売りにするところも出てくると思います。とはいえ喫煙者以外は入りにくい空間になるのでいろいろ難しい気もします。
2.過去に全面禁煙化した飲食店はどうか
実は過去に全面禁煙化した大手の飲食店はマイナスの影響を受けていなかったりします。喫茶店、ファーストフード、ファミレスが全面禁煙化している
①ロイヤルホスト
2013年に全面禁煙化しています。ロイヤルホストの2013年の年間来客数は前年比で103.2%でした。
客足は全面禁煙化によってそれほど遠のかなかったということでしょう。禁煙化の影響は軽微だったと言えるでしょう。
とはいっても2014年からは年間来客数はずっと減少傾向だったりします。全面禁煙によって客足が伸びるわけでも減るわけでもなさそうです。
②マクドナルド
実はマクドナルドが全面禁煙化した時は実は大赤字をたたき出して、全面禁煙は厳しいという内容の報道があったりしました。
とはいっても全面禁煙化を実施した時期はは品質期限切れ鶏肉問題があった時で信頼がものすごく落ちていた時期とも重なっています。
2014年の全面禁煙化から4年たとうとしているマクドナルドですが売り上げは落ちているのでしょうか?実は結局全面禁煙化の影響はないと言っていいでしょう。
マクドナルドは今や飛ぶ鳥を落とす勢いで収益が伸びています。2017年12月期末決算では過去最高益をたたき出しました。
ファミリー向けのマクドナルドは全面禁煙による影響は受けなかったといっていいでしょう。
③スターバックス
スタバといえば全席禁煙のイメージがあるのですが日本に上陸した時には禁煙ではありませんでした。
こちらはコーヒーへのこだわりから少しずつ全面禁煙化していったようで、その時に経営的な影響はなかったようです。
昔からたばこを吸えないイメージのスタバですが吸えないことが経営に影響は及ぼしていません。スタバの場合には客層の問題も大きくありそうですね。
3.サイゼリアだけでなくデニーズ、ケンタッキーも全面禁煙化する
これらのお店は全面禁煙化は問題なく成功するのではないでしょうか。先に書いたように店を選ぶための重視点にも禁煙があり、利用するであろう若年層やファミリー層は全面禁煙はデメリットでないでしょう。
ロイヤルホストやマクドナルドが全面禁煙化によって大きな影響を受けていないことも全面禁煙化の流れを後押ししたかもしれませんね。
上場企業であるため月次報告などで客数の増減などがわかるので結果が楽しみですね。
サイゼリアは2019年9月に全面禁煙化とのことなので禁煙化で売り上げが減るか見ものでしょう。
4.居酒屋の全面禁煙化もついに始まる
スタバ、マック、ロイヤルホストの全面禁煙が失敗していないことを考えると、飲食店の全面禁煙化は経営的な影響を与えないいい前例になっているでしょう。
しかしまだあまり踏み込まれていない領域があります。それが居酒屋です。
①2018年6月1日から串カツ田中がほぼ全店舗禁煙化する
居酒屋田中のニュースによると2018年6月1日から串カツ田中がほぼ全店舗禁煙化するようです。
株式会社串カツ田中(本社:東京都品川区東五反田、代表取締役社長:貫 啓二、以下:串カツ田中)は、先月4月12日(木)に「2018年6月1日(金)から串カツ田中のほぼ全店である約180店舗(※1)で全席禁煙化または一部フロア分煙化(※2)すること」を発表いたしました。この度、6月1日時点の各店舗の禁煙情報が確定いたしましたのでお知らせいたします。現状居酒屋チェーンでは、ほぼ全店で禁煙化するのは居酒屋チェーンでは初となります(※3)。
6月1日(金)からの「串カツ田中 ほぼ全店禁煙化」に関する 禁煙店舗情報をお知らせいたします。
上場企業で規模の大きな居酒屋が一部を除き全面禁煙を実施したことは本当に興味深いです。
上場企業でありIRで既存店売上高と客数の発表をしています。そのため全面禁煙後の客数などの推移を追うことで全面禁煙化の影響をみることができます。
たばこと売り上げの因果関係がはっきりしますね。売り上げが落ちるのか変わらないのか見ものです。ここの客足が遠のかなかったら続くところが出てきそうです。
②居酒屋は喫煙する層の利用率が高い
居酒屋の利用者層は男性の20~50代が多く、比較的喫煙率が高い層とかぶっているということです。
そうしたことから居酒屋業界は禁煙化の流れに反対しているるのだと考えられます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考
・串カツ田中
・串カツ田中IR
適時開示情報の月次報告に既存店売上高等の情報があります。
・マイナビニュース「ロイヤルホストの全席禁煙は成功か? – 経緯と結果を聞いた 」
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